遺言書について

「終活」がさかんな昨今、遺言書を作成する方は増えています。

平成26年中に全国で作成された公正証書遺言の件数は、10万件を超えました。一方で、財産の分け方で話し合いがまとまらず、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件の件数も、この10年で1.4倍に増加しています。
相続が起きたとき、最も悲しいことは、ご自身が残した遺産をめぐって残されたご家族が争うことではないでしょうか。

一度相続で争いになった関係は、その後修復されることはほとんどありません。
遺言書を作成することにより、遺産は誰にどのように分配したいのか、ご自身の意思を明確にすることができます。
あなたがどのように考えていたか、その意思が分かれば残された家族の争いを未然に防ぐことができるかもしれません。

 

「遺言書なんて資産家が書くものだ。」
「気持ちなんて言わなくてもわかるだろう。」
「我が家に限ってもめるはずはない。」
「法律通り分ければいい。」

 

こんな考えが相続トラブルを招いている原因の一つではないでしょうか。
「相続」を「争族」にしないためにも、遺言書を作成されることをお勧めします。

遺言書の種類と特徴

遺言書には方式により、いくつか種類がありますが、一般的には自筆証書遺言と公正証書遺言がよく使われています。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いと特徴は、下記のとおりです。

自筆証書遺言

作成者 本人
証人 不要
メリット
  • 手軽に作成できる。
  • 費用がかからない。
  • 遺言の内容を秘密にできる。
デメリット
  • 要件を満たさず、無効になることがある。
  • 紛失や改ざんの恐れがある。
  • 死後、発見されないことがある。
  • 死後、家庭裁判所で検認手続が必要。

公正証書遺言

作成者 公証人
証人 2名以上必要
メリット
  • 法律のプロが作成するため、信頼できる。
  • 紛失や改ざんの恐れがない。
  • 死後すぐに手続ができる。
  • 寝たきりや身体が不自由でも作成できる。
デメリット
  • 作成に多少手間がかかる。
  • 費用がかかる。

遺言書を作成しておいたほうがよい方

1. お一人様

配偶者がおらず、親が先に死亡している場合、兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子)が相続人になります。

兄弟の人数が多い、又は異母兄弟・異父兄弟がいる場合は、相続人の関係も複雑になります。
遺言書がなければ、相続人全員が話し合い、財産の分け方を決めることになります。人数が多ければ多いほど、話し合いの難航が予想されます。
遺言書を書いておけば、自分の希望通りに財産を分配することが可能です。

2. 子どものいない夫婦

夫婦の一方が死亡した場合、残された配偶者だけでなく、被相続人の親や兄弟姉妹がいる場合は、その方たちも相続人になります。

被相続人の親はすでに死亡しているが、兄弟は健在という場合、相続財産に対して、配偶者が4分の3、兄弟が4分の1という割合で権利を有することになります。
夫婦で築いてきた財産を、兄弟姉妹にも分けなければならなくなる可能性があります。
また、預貯金の解約や不動産の名義変更等の相続手続を行うには、全ての相続人の実印や印鑑証明書が必要になります。
遺言書を書いておけば、全ての財産を配偶者に相続させることも可能です。

3. 内縁関係の夫婦

内縁関係の夫婦とは、婚姻届が出されていない事実上の夫婦のことです。

長年生活を共にし、夫婦同様の生活をしてきたとしても互いに相続権はありません。
遺言書を書いておけば、内縁の妻(内縁の夫)に財産を残すことができます。

4. 再婚しており、前妻(前夫)との間に子どもがいる

前妻(前夫)の子どもと後妻(後夫)とは、関係が良くない場合も多くあります。

遺産分割協議の難航が予想されます。
遺言書を書いておけば、遺産分割協議をする必要もなく、スムーズに相続が進みます。

5. 行方不明の推定相続人がいる

行方不明で連絡が取れない相続人がいる場合、預貯金の解約ができず残された家族が生活に困る可能性があります。

連絡が取れないからといって、その方を無視することはできません。
遺言書を書いておけば、遺産分割協議をする必要がありませんので、行方不明者と連絡が取れなくても預貯金の解約もスムーズにできます。

6. 相続人のうち一人の子どもに介護してもらった

親子等の関係においてはお互いに扶養義務があります。つまり、子は親の面倒をみる義務があります。

しかし、複数いる子のうち、一人の子どもだけが献身的に介護や生活の支援をしてくれた場合、財産を法律通りの割合で分けることは公平といえるでしょうか。
遺言書を書いておけば、世話になった子どもに少しでも多く財産を残したり、感謝の気持ちを伝えることができます。

7. 相続人がいない

相続人がおらず、特別縁故者もいない場合、遺産は国のものになってしまいます。

しかし、遺言書を書いておけば、生前お世話になった人や自分が選だ団体に財産を残すことができます。

私たちにできること

私たちは、皆様が遺言書を作成される場合の相談、文案の作成、必要書類の収集等から、公正証書で作成される場合の公証人との連絡調整、証人への就任もお手伝いさせていただいております。
また、遺言執行者に指定いただいた場合、遺言者が亡くなられた後に、遺言書の内容を実現する遺言執行をさせていただくことも可能です。